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電子レンジ使用時のプラスチック容器からの大量のマイクロプラスチック放出が判明

くうきメン
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冷めたご飯を温めたり、飲み物を温めたりする時、私は極力電子レンジを使わないようにしており、使う場合も容器はプラスチック製のものから陶器やガラス製に変えています。これは何となくの感覚で行っていたのですが、同様の工夫をされていることも多いはず。電子レンジの普及とプラスチック容器の使用が増える中、健康への影響が懸念されています。

レンジでマイクロプラスチックが急増

ネブラスカ医科大学の研究によれば、プラスチック製の容器を電子レンジで加熱すると、非常に多くのプラスチックの粒子が放出されることが明らかになりました。具体的には、容器1平方センチメートルあたり20億個以上のナノプラスチックと400万個のマイクロプラスチックが放出されたと報告されています。

これまでの研究と比較するとマイクロプラスチックの発生量がかなり多く見積もられている可能性がもありますが、驚きの多さです。

 

マイクロプラスチックの発生量が多い容器と保存方法は?

この研究で調査したのは

・2種類のポリプロピレン製プラスチック容器

・ポリエチレン製の食品パウチ(おそらくジップ付の保存用袋)

加熱条件

・冷蔵庫保存(20℃、10日間)

・常温保存(40℃、10日間)

・高温保存(70℃)、10日間

・電子レンジ加熱

保存条件

・水

・酸性の水(果物や野菜の保管を想定)

上記の異なる使用シナリオで調査。プラスチックの種類はポリエチレンとポリプロピレンと熱に強く、よく使われているものです。

 

電子レンジの使用がもっとも多くマイクロプラスチックを発生

上記条件で調べたところ、マイクロプラスチックの発生はレンジ使用時に最も多く、他の条件の100倍以上多くなるという結果でした。

温度の影響もあるようで、保存温度が高い程マイクロプラスチックの発生量があるようです。

詳細を確認されたい方は原文のデータへ

 

常温保存でもマイクロプラスチックが生成

電子レンジだけでなく。6か月以上の冷蔵や常温保存も大量のマイクロプラスチックとナノプラスチックを放出されていることが確認されています。

ということは保管期間が長い容器ではマイクロプラスチックやナノプラスチックが生成していることになります。しかもポリエチレンベースの食品パウチは、ポリプロピレンベースの食品パウチよりも多くの粒子を放出することが確認されています。

 

マイクロプラスチックとは??

5ミリメートル以下の微小なプラスチック片をマイクロプラスチックと呼びます。石油製品であるプラスチックは加工しやすく様々な生活用品に使用されています。プラスチックの原料はモノマーとよばれる分子レベルの鎖のようなもの。それらが繋がるとポリマーと呼ばれ、様々な形に加工されます。お皿やシート、コップ、繊維など私たちの生活に一部となっています。

なお、1マイクロメートル以下のプラスチック片はナノプラスチックと呼ばれます。1マイクロメートルとは1ミリメートルの1000分の1の大きさです。

プラスチック製品は加工しやすいといったメリットがある一方、熱や紫外線に弱く壊れやすいというデメリットがあります。使用しているうちにポリマーとしてつながった一部からプラスチックがはがれ、マイクロプラスチックとして放出されます。

電子レンジは電磁波で分子に振動を与えるためポリマーの一部を剥離させ、マイクロプラスチックやナノプラスチックを発生しやすいのだと考えられます。

 

マイクロプラスチックは体にわるいの?

マイクロプラスチックが発見されはじめた当初は、体に入ってもそのまま体から排出されていると思われていましたが、近年は血液や臓器の内部までマイクロプラスチックが侵入していることが明らかにとなっており、健康影響が懸念されています。その影響が明らかになるのはまだまだこれからですが、以下の3つの点から恐らく体にわるいものだと考えられています。

 

①マイクロプラスチックのベクター効果

プラスチックは疎水性です。疎水性というのは水に溶けにくい性質をもち、その一方で油の親和性が高い性質を持ちます。環境中の疎水性の有害物質は疎水性のものに集まりますので、マイクロプラスチック表面には疎水性の有害物質が集まりやすい場所になります。これはトロイの木馬のような効果をもたらし、本来ならば届きにくいところに有害物質な化学物質が届けられることになります。トロイの木馬とは安全な振りをして侵入し、悪さをすることです。体にとっては細胞の一種や食べ物だと思って体に取り込んだら実は体に悪い異物だったということになります。

②プラスチックの添加剤

一般的なプラスチックにはポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどがあります。これらのプラスチックには、性能を向上させるための様々な添加剤や補強材が混入されています。これらの添加剤の多くが有害物質です。フタル酸エステルや難燃剤や紫外線吸収剤、ビスフェノールなどです。これらの添加剤やプラスチックは時間とともに劣化し、水や摩擦、熱、光などの影響を受けて微小な粒子に分解していくのです。

③マイクロプラスチックの体内への取込み

プラスチックは分解しやすいとはいえ、人間の体に入ってすぐに分解することはありません。マイクロプラスチックは、ある一定の大きさを超えるとそのほとんどが体の外に排出されると考えられています。ところが0.1µm以下のナノプラスチックのサイズになると体の中の表面の粘膜を通り、体の内部に入り込む恐れがあります。これが異物として体に良くないのと、①のベクター効果によって本来ならば届きにくいところに有害物質な化学物質が届けられることになります。そのメカニズムは明らかになっていませんが、腸の微生物相の構成を変えることや食事中のマイクロプラスチックは腸の微生物相の多様性を減少させ代謝の変化を引き起こす可能性があるなどの報告があります。

 

どうする?容器保存

このようなデータを考えると、思っている以上に私たちが日常で使っているプラスチック製の容器から発生するマイクロプラスチックやナノプラスチックは多そうです。電子レンジの使用方法について少し慎重に再考の余地があることがわかります。

特に、子供や赤ちゃんの食事に関しては、出来るだけ陶器やガラス製の容器を使用すると良さそうです。マイクロプラスチックの影響は明らかになっていませんが、体内に入り込み影響を与える可能性が高いという報告もあります。https://fsi-mp.aori.u-tokyo.ac.jp/2020/08/4.html

 

予防方法

石油化学製品を使ってきたことにより、身の回りのいたるところにマイクロプラスチックが存在していることが明らかになってきました。その影響や人の健康に与えるメカニズムは明確になっていませんが、何かしらの影響があるのは間違いないようです。

人間の体にマイクロプラスチックが入る主な経路は、食べ物、飲み物、そして空気の3つです。

プラスチックを多く含む食べ物を避ける

ムール貝はマイクロプラスチックの摂取の指標として注目されています。研究によれば、中国産のムール貝にはヨーロッパ産よりも多くのマイクロプラスチックが含まれているとのこと。具体的には、225gのムール貝を摂取すると、7μgのプラスチックを摂取することになると言われています。ムール貝だけでなく、貝類はマイクロプラスチックの取込量が多いです。何が言いたいかというと、貝類を食べるとプラスチック摂取量が増えることになります。また貝の部位によってプラスチックの含有量が異なると思いますので、マイクロプラスチックが少ない部位を食べるようにするのも有効です。

水道水とペットボトルの水

ペットボトルの水の方が水道水よりもマイクロプラスチックが多いそうです。ペットボトルは保管期間が長い程、マイクロプラスチックの量が増えるようですので新しいものを飲む方が良さそうです。

追加情報:ペットボトルの水の中に24万個のマイクロ、ナノプラスチック含まれているという研究データがあります。

ボトル入り飲料水に約24万個のナノプラスチックが含まれていることを発見(Naixin et. al.,2024)https://doi.org/10.1073/pnas.2300582121

 

プラスチックが少ない空気

さすがに、空気は選べませんが住宅内の空気は住宅内に存在するものに大きく影響を受けます。衣類や寝具、絨毯などはポリエステルやアクリルなどの石油化学製品ではなく綿やウールなどの天然の繊維を選ぶと良いですね。

マイクロプラスチック問題は今後も深刻化していく可能性がありますが、一人一人が意識を持ち、日常生活の中での小さな工夫や選択を通じて、環境や健康への影響を最小限に抑える努力を続けていくことが大切だと感じています。

 

参考文献と紹介記事は以下です。

論文:『Assessing the Release of Microplastics and Nanoplastics from Plastic Containers and Reusable Food Pouches: Implications for Human Health』American Chemical Society

紹介記事:https://www.sciencedaily.com/releases/2023/07/230720124925.htm

 

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くうきメン

空気中の様々な化学物質を誰でも簡単に測定可能なサンプラーを開発した空気博士。企業→大学助教を経て独立。シックハウス相談を中心に、衣食住にまつわる生活環境の化学物質と環境問題の情報を発信しています。

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