建材

一般知識

建材選びは空気選び

本記事のトピックスです

・室内空気中化学物質の主な発生源5選

・建材を制すものは新築・リフォームの空気を制す

 

この記事を書いた人

企業の研究員、大学助教を経て独立。空気中の様々な化学物質を誰でも簡単に測定可能なサンプラーを開発した空気博士。シックハウス相談を中心に、衣食住にまつわる生活環境の化学物質と環境問題の情報を発信しています。

本記事の対象者

・新築・リフォームを計画中の人

・建築中、リフォーム中の人

・シックハウスが気になる人

・家づくりに関わっている人

VOCの発生源は?

VOCとは「気体として存在しやすい化学物質」です。VOCとは→リンク

では、気体として存在しやすい化学物質とは何でしょうか。それは沸点の低い有機化合物です。一般的に沸点が260℃以下のものがVOCと呼ばれ、身の回りには100種類を超えるVOC存在が確認されています。家にある物で金属や石などの無機化合物以外のすべてのものからVOCが発生していると考えても差し支えないと思います。それらの発生源を大まかに以下の5つに分類することが出来ます。

①建材・接着剤
②家具などの什器
③生活用品
④微生物
⑤植物・人間

①は新築時やリフォーム時に特に問題になりやすく、②~⑤は実際に暮らし始めてからの生活様式や住宅の性能に影響を受けます。


今回は①についてみていきましょう。

建材・接着剤

住宅を構成している主な建材のうち、住宅内の空気に大きく影響を与えていると考えられるのは、壁材、床材、天井、構造材です。室内の壁や床、天井は表面積が大きく、かつ生活空間に面していますので、これらの建材自体に含まれる揮発性有機化合物は容易に室内空気と混ざり合います。その量は微量であっても、表面積が広いので室内空気に与える影響は大きいです。建材から室内空間に揮発する物質の量を放散速度という単位面積あたりの発生量として評価することが出来ます。単位はμg/㎝2です。

揮発しやすい物質とそうでない物質がある

揮発しやすい(気体になりやすい)物質は小さな物質です。物質は分子量といって分子を構成している原子の数で重さと大きさが決まっています。分子量が小さいほどガスになりやすい傾向がありますし、小さい分子ほど、皮膚や呼吸を通じて体内に入って来やすいです。一方、ワセリンのようなドロッとした油はガスになりにくいですし、体に塗っても皮膚から体の内部にはほどんど入って来ません。ところがインク落としのベンジンはサラサラの液体で匂いもきついですし、分子の大きさが小さいため体の内部にも入ってきやすいです。このワセリンとベンジンの二つの物質は炭素と水素からなる脂肪族炭化水素に分類され、性質が似た化学物質に分類されます。しかしながら、分子量が違うため性質が異なり、利用方法や健康影響も全く異なります。

ワセリンヘキサン

ワセリンを直接肌に塗って乾燥を防いだりすることはよくありますが、ベンジンを肌に塗ったら絶対にダメです!!

シックハウスの原因になるような分子はどこから出てくるか

シックハウスの原因物質の一つであるVOCは接着剤や建材表面に塗布する塗料などから出てきます。接着剤も塗料も単一物質ではなく有機溶剤とよばれる化学物質に溶かされています。この有機溶剤は他の物質と混ぜやすいように、分子量が低く沸点の低い化学物質が使用されています。このような有機溶剤に溶けた化学物質は塗りやすいですし、伸ばしやすいです。さらに揮発しやすいので自然に抜けて、残った成分は固く固まります。接着剤なら固定されますし、塗料なら定着します。製品としてとっても扱いやすいです。

自然素材の建材からもVOCは発生

近年の健康志向の高まりから、無垢材や漆喰や珪藻土などが注目されています。これらの建材はとても安全そうに見えますが、見た目だけで判断することはできません。これらの自然素材に接着剤や防腐剤が混ぜられている商品や無垢材を選んだつもりが知らずに集成材を選んでしまうこともありますので、建材を選ぶときは慎重になるべきです。特にセルフリノベーションをする際は使用する商品の成分をよくご確認ください。

無垢材と集成材の違い

無垢材と集成材はどちらも木材です。無垢材は木をカットしたものですが、集成材は木材を細かくカットしたものを接着剤によって固めています。無垢材からは無垢材に含まれる精油の成分が発生しますが、集成材は精油成分に加えて接着剤の成分が発生します。無垢材は傷やへこみに強く、時間が経過するほど強度が増すといったメリットがありますが、乾燥過程において木が伸びたり曲がったりねじれたりすることがあります。一方、集成材はサイズ変わることが少なく、施工しやすいというメリットがあります。以下図の左が無垢材、右が集成材です。集成材の中には米糊て製造されているものがあり、有害な化学物質の発生がほとんどないものあります。

無垢材 集成材

 

漆喰や珪藻土は特に注意

漆喰や珪藻土自体からは揮発性の化学物質の発生はありません。しかし、これらは施工を簡単にするために接着剤が混ぜられているものやカビの発生を防ぐために防カビ剤が含まれていることがあります。壁は面積が広いために接着剤が使用されていると室内空気を汚染します。過去に発生したシックハウスの代表的例に木造、漆喰壁を使用した住宅が挙げられており、厚生労働省の第12回シックハウス問題に関する検討会資料2-1で紹介されています。詳細はこちら。不純物の含まれていない漆喰や珪藻土は室内の調湿作用や空気清浄機能があるため、大変有益な建材です。使用される場合は商品の情報をよくご確認の上、ご使用されるとよいです。プロの施工会社でも化学物質の発生に関してあまり知らないことが多く、自然素材だから安全の一点張りの方がいます。本当に自然素材を熟知されている方はそのようなことは言いませんので、その場合は注意してください。自然素材だからこそ、含有する接着剤の有無や自然素材そのものから発生する化学物質について正しい説明が必要です。その辺の話はまた改めて取り上げたいと思います。

 

まとめ

・室内空気中化学物質の主な発生源5選(①建材・接着剤、②家具などの什器、③生活用品、④微生物、⑤植物・人)

・建材から揮発する化学物質の多くは接着剤と塗料に含まれる有機溶剤

・自然素材を使う際は特に注意が必要

※まずは空気測定を実施するところからスタートです、分析受注はこちらから→

空気測定に関するご質問などはLine公式アカウント@KUUKIMENでも受け付けますので、お気軽にお問い合わせください。

友だち追加

 

 

  • この記事を書いた人

くうきメン

空気中の様々な化学物質を誰でも簡単に測定可能なサンプラーを開発した空気博士。企業→大学助教を経て独立。シックハウス相談を中心に、衣食住にまつわる生活環境の化学物質と環境問題の情報を発信しています。

-一般知識