PFAS分析

PFAS土壌調査は土だけでよい?事業所で地下水まで測る分析設計

過去に泡消火薬剤を使用した場所や、PFASを扱っていた可能性のある事業所で、「まず土を1検体だけ測ればよいのか」と判断に迷うことがあります。

結論からいうと、発生場所の確認では土壌を中心に、地下水への移動や敷地境界への影響を確認する場合は地下水を組み合わせるのが基本です。

土壌含有量、土壌溶出量、地下水濃度は、それぞれ表している状態が異なります。目的を決めずに採取すると、PFASが検出されても、範囲や移動経路、次の行動を判断できないことがあります。

PFAS土壌調査は「結果で何を決めるか」から始める

最初に、調査結果を何の判断に使うのかを明確にします。

  • 過去の取扱場所にPFASが残っているか確認したい
  • 土壌から水側へ移動する可能性を把握したい
  • 地下水へ到達しているか確認したい
  • 敷地境界や周辺井戸への影響を検討したい
  • 対策工事の前後で濃度が変化したか確認したい
  • 土地取引や施設廃止に備えて自主調査を行いたい

社内確認を目的とする自己採取と、行政提出、土地取引、紛争対応に使用する調査では、求められる証拠性が異なります。

後者では、第三者による採取、試料の受け渡し履歴、写真・位置情報、ブランク試料、分析機関の品質管理などが必要になる可能性があります。採取前に、提出先、所管自治体、法律・土壌調査の専門家へ要件を確認します。

採取前に過去の使用履歴を整理する

PFASは多様な用途で使用されてきました。環境省のPFASに関するよくある質問では、PFOSの過去の用途として泡消火薬剤や金属メッキ処理剤などが挙げられています。

ただし、特定の業種や設備があるという理由だけで、PFASが使用されていたとは断定できません。次の資料から採取地点の候補を絞ります。

  • 泡消火薬剤の製品名、購入・廃棄記録、SDS
  • 消火訓練、火災、漏えい事故の場所と年月
  • 薬剤、廃液、廃棄物を保管していた場所
  • 排水溝、集水桝、地下配管、排水処理設備の位置
  • 過去の製造工程、設備配置、土地利用履歴
  • 盛土、舗装、掘削、建物改修の履歴
  • 井戸の位置、深さ、用途、地下水位の既存資料

現在使用している薬剤がPFASを含まない場合でも、それだけで過去の使用を否定することはできません。古い在庫台帳や設備図面、当時の担当者への聞き取りが役立つ場合があります。

土壌含有量・溶出量・地下水で分かることは異なる

試料・試験 主に分かること 主な注意点
土壌含有量試験 採取した土壌に含まれる対象PFASの量 地点や深度によるばらつきが大きく、1地点で敷地全体を代表できない
土壌溶出量試験 定められた試験条件で土壌から水側へ溶出する対象PFAS 実際の地下水濃度を再現する試験ではない
地下水 帯水層へ到達し、採水地点まで移動した対象PFAS 井戸の位置、取水深度、地下水流向、採水条件に左右される
排水・表流水 排水系統や降雨流出を通じた移動状況 流量、操業状態、降雨の有無で濃度が変わる

土壌からPFASが検出されても、直ちに地下水や敷地外へ移動しているとはいえません。

反対に、1本の井戸で不検出でも、採水した深度や地下水流向が適切でなければ、敷地全体にPFASがないとは判断できません。

調査目的に合わせて採取地点を決める

発生場所を確認したい場合

消火訓練場所、薬剤保管場所、排水桝周辺など、履歴から可能性の高い地点を優先します。浸透経路や地層を考え、深度を分けて採取することも検討します。

異なる深度の土壌を一つに混ぜると濃度が平均化され、高濃度の層を見落とす可能性があります。

地下水への移動を確認したい場合

地下水の上流側と下流側を比較できる配置を検討します。既設井戸を利用する場合は、井戸全体の深さだけでなく、どの深度から水を取り込む構造なのかを確認します。

敷地外への移動可能性を確認したい場合

発生源候補と敷地境界の間、地下水流向の下流側、近隣の水路などが候補になります。地下水流向が分からない場合は、水位測定や地質資料の確認から始めます。

必要な地点数に一律の正解はありません。敷地面積、地質、地下水位、過去の取扱場所、調査目的から決定します。

PFOS・PFOAだけか、多項目分析か

分析項目 向いている目的 限界
PFOS・PFOA 水試料を国内の指針値と比較する その他のPFASは分からない
PFOS・PFOA・PFHxS 主要3物質の残留状況を確認する 短鎖PFASや前駆物質は対象外
多項目分析 組成の把握、地点間比較、発生源候補の検討 すべてのPFASを網羅するわけではなく、各物質に評価値があるとは限らない

水中のPFOSとPFOAについて、環境省は公共用水域・地下水の指針値を合計50ng/Lとしています。また、水道水では2026年4月1日から同じ値が水質基準となりました。

この50ng/Lは水の濃度を評価する値であり、土壌含有量の基準ではありません。

2026年9月18日時点で、環境省は土壌中のPFOS、PFOA及びPFHxSについて暫定測定方法を示しています。しかし、測定方法があることと、土壌に全国一律のPFAS判定基準が設定されていることは別です。

土壌結果を何と比較するかは、土地利用、調査目的、周辺地下水の利用状況、自治体や取引先の要求を確認して個別に設定します。

土壌の報告単位を確認する

土壌含有量試験では、ng/gやµg/kgなどの土壌重量当たりで結果が示されます。1ng/gは1µg/kgに相当します。

土壌溶出量試験では、作製した溶出液についてng/Lなどの体積当たりで示されます。地下水もng/Lで報告されますが、人工的に作製した土壌溶出液と現地の地下水では試料の意味が異なります。

そのため、単位が同じという理由だけで、土壌溶出量と地下水濃度を同一の結果として扱うことはできません。

分析方法と定量下限を確認する

環境省は、有機フッ素化合物関係のページで、土壌中のPFOS、PFOA及びPFHxSに係る暫定測定方法として、溶出量試験と含有量試験を公開しています。

海外の分析方法としては、米国環境保護庁が2024年12月に公表したEPA Method 1633Aがあります。水、地下水、土壌、底質などを対象に、LC-MS/MSで40種類のPFASを測定する方法です。

ただし、EPA Method 1633Aを使用したというだけで、日本国内の法令に基づく調査になるわけではありません。米国でも、規則として正式に承認されるまでは、全国一律の法令遵守用分析法として必須ではないと説明されています。

定量下限は、分析値を数値として報告できる下限です。地下水を50ng/Lと比較する場合は、それより十分に低い定量下限を設定しなければ、基準以下であるかを適切に評価できません。

見積書には、対象物質、分析方法、定量下限、報告単位、土壌の乾燥重量換算の有無を明記してもらいます。

採取時の混入を防ぐ品質管理

PFASは低濃度を測定するため、採取器具、容器、作業用品などからの混入が結果へ影響する可能性があります。

  • 分析機関が指定または提供する容器を使用する
  • 採取器具と接液部材を事前に確認する
  • 地点名、座標、採取深度、地層を記録する
  • 地下水位、採水方法、採水量、濁りを記録する
  • 必要に応じて現場ブランクや重複試料を用意する
  • 採取から搬入までの温度、時間、受け渡し履歴を管理する

現場ブランクは、採取現場で容器や作業環境からの混入がなかったかを確認する試料です。低濃度の検出値を評価するときは、試料の数値だけでなく、ブランクや回収率などの品質管理結果も確認します。

PFAS分析結果の読み方

検出されたことと、発生源の特定は別です

複数地点でPFASの組成が似ていても、それだけで特定施設を唯一の発生源と断定することはできません。土地利用履歴、地下水流向、濃度分布、採取時期を組み合わせて評価します。

不検出は「PFASが存在しない」という意味ではありません

不検出とは、測定対象としたPFASが、その分析方法の検出下限または定量下限を下回ったという意味です。対象外のPFASまで存在しないことを示すものではありません。

検出値だけで健康影響を判断しません

土壌や地下水からPFASが検出されても、検出結果だけで健康への影響や実際の摂取量を判断することはできません。飲用井戸の有無、利用状況、移動経路などを確認します。

事故による漏えいが疑われる場合の注意点

PFOS、PFOA及びそれぞれの塩は、水質汚濁防止法における「指定物質」です。

現在進行中の事故によってPFOS・PFOAを含む薬剤等が漏えいし、公共用水域への排出または地下への浸透が疑われる場合は、自主分析の結果を待つのではなく、応急措置と届出の要否を直ちに所管自治体へ確認してください。

水質汚濁防止法では、指定物質を含む水が事故により公共用水域へ排出され、または地下へ浸透し、人の健康や生活環境に被害を生じるおそれがある場合、対象事業者に応急措置と届出が求められることがあります。詳しくは、環境省の指定物質に関するQ&Aをご確認ください。

PFAS土壌調査でよくある失敗

  • 使用履歴を調べず、敷地中央の土を1点だけ測る
  • 表層と深部の土壌を混ぜる
  • 含有量試験と溶出量試験を区別しない
  • 土壌含有量を水の50ng/Lと比較する
  • 未確認の容器や器具で採取する
  • 地下水流向を確認せず、既設井戸を1本だけ測る
  • PFAS組成を比較する目的なのにPFOS・PFOAだけで結論を出す
  • 一回の調査だけで移動方向や将来の濃度を断定する

CTM研究コンサルへ相談する価値

PFASの敷地調査では、分析項目を増やす前に、発生場所、移動経路、評価地点、結果の使用目的を整理する必要があります。

CTM研究コンサルでは、農学博士・分析化学研究者の石坂閣啓が、過去の使用履歴や敷地図を確認し、調査後に何を判断したいかを整理します。

そのうえで、土壌含有量・溶出量・地下水・排水の選択、採取地点、深度、対象PFAS、定量下限、品質管理条件を検討し、高度な環境分析技術を持つ分析機関へ橋渡しします。

分析後は、単位や定量下限の意味、地点間の濃度差、結果から言えること・言えないこと、追加調査の必要性を平易に解説します。

よくある質問

土壌だけ測れば地下水への影響も分かりますか?

土壌分析だけでは、地下水へ到達した濃度や移動範囲は分かりません。地下水への移動を判断したい場合は、井戸の位置と取水深度を設計した水質調査を組み合わせます。

土壌のPFAS濃度を50ng/Lと比較できますか?

土壌含有量とは比較できません。土壌溶出量は体積当たりで示される場合がありますが、公共用水域や地下水とは試料の意味が異なります。目的に応じた評価方法を事前に決める必要があります。

既設井戸の水を1回測れば十分ですか?

現状のスクリーニングには役立ちますが、敷地全体や移動方向を代表するとは限りません。井戸の取水深度、地下水流向、季節変動を確認し、必要に応じて複数地点・複数時期を測定します。

何項目を分析すればよいですか?

水の指針値との比較が目的ならPFOS・PFOAが基本です。過去の使用状況や発生源の特徴を調べる場合は、PFHxSや短鎖PFASなどを含む多項目分析を検討します。

土を掘る前に、敷地図と調査目的を整理しませんか

PFAS調査では、試料を採ってから分析項目を考えると、重要な地点や比較試料が不足することがあります。

PFAS分析サービスでは、水試料の分析内容をご案内しています。土壌と地下水を組み合わせる調査は、カスタム分析相談として目的と仕様を個別に整理します。

対応分野の全体像は分析サービス一覧をご確認ください。

お問い合わせフォームから、敷地図、過去の使用履歴、井戸情報、結果の使用目的をお知らせください。測定項目が決まっていない段階でも、まず目的と試料を整理する相談ができます。

参考資料

本記事は2026年9月18日時点の公開情報に基づいています。法令・条例に基づく調査、行政提出、土地取引、紛争対応を目的とする場合は、採取前に所管自治体、提出先、法律・土壌調査の専門家へ要件を確認してください。

  • この記事を書いた人

くうきメン

空気中の様々な化学物質を誰でも簡単に測定可能なサンプラーを開発した空気博士。企業→大学助教を経て独立。シックハウス相談を中心に、衣食住にまつわる生活環境の化学物質と環境問題の情報を発信しています。

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