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化学物質過敏症について①(まとめ記事)

くうきメン
くうきメン

今回は化学物質過敏症についてこれまで取り上げた内容をまとめ記事にしました。質問やご意見などもお待ちしております!

目次

1. 化学物質過敏症と社会問題

1.1 発症と定義

化学物質過敏症は、特定の化学物質に一度過敏になると、その後は同じ種類の化学物質に対して非常に少量でも過敏反応を示すことがある病状です。

化学物質過敏症の定義としては厚生労働省の定義とアメリカでは臨床環境医らによる多種類化学物質過敏症1999年合意がありますが、現在診療で使用されている基準は以下の1999年合意が中心のようですので、1999年合意を以下に示します。

1999年合意の化学物質過敏症の定義

番号 定義
症状は(何度もの化学物質)暴露により再現してくる
慢性の経過を示す
低レベルの暴露で症状が出現してくる
症状は原因物質の除去で改善または軽減する
化学的に無関係な多種類の化学物質に反応する
症状は多種類の器官系にまたがる (1999年追加)

1.2 化学物質過敏症と社会問題

2000年前後の化学物質過敏症

この時期、シックハウス問題が社会問題として浮上しました。シックハウスと化学物質過敏症の間には密接な関連があり、住宅の建築材料から発生する化学物質への暴露が、化学物質過敏症の主な発症原因であると疑われていました。特に、接着剤の使用や住宅建材そのものからの化学物質の発生が問題視されました。

現在の化学物質過敏症

時代が進むにつれて、化学物質過敏症の発症原因は変化しています。現在では、香り付きの生活用品、特に柔軟剤などの香害と化学物質過敏症の関連が強く疑われています。生活用品の化学物質が多様化する中で、これらの製品からの繰り返しの暴露が化学物質過敏症を引き起こすケースが増えているとされています。

つまり、化学物質過敏症と社会での化学物質の使い方との関係は非常に大きいです。そして、この関連性は時代とともに変化しています。かつてはシックハウスとの関連が強く指摘されたのに対し、現在では日常生活で使う香り付き製品などとの関連が強調されています。どちらの共通点も化学物質への繰り返しの曝露という点です。

1.3 現在の化学物質過敏症の発症原因

化学物質過敏症の発症原因は未だ完全に明らかにされていません。2017年のあすぷろ調査における化学物質過敏症患者を対象としたアンケート結果(サンプル数172、設問数48)によれば、化学物質過敏症の発症のきっかけとなったのは以下の通りです。

発症の原因 回答率(%)
柔軟剤などの高残香性製品 55
自宅の新築・リフォームや転居でシックハウス症候群を発症 46
排気ガス 24
住宅地での除草剤や殺虫剤等の散布 23
受動喫煙(職場) 20
受動喫煙(家庭) 19
外壁塗装(自宅または近所) 17
職場が化学物質を扱う製造メーカー 16
農業地帯で繰り返される無人ヘリによる高濃度農薬散布 15
シロアリ駆除による薬剤(自宅または近所) 15
職場が害虫駆除業 13
職場が医療機関 12
職場が茶農家(慣行農法:農薬等を使用する) 12

また、北条らの論文(2018)によれば、10年前(1999年から2003年)に行われたQEESIの調査と近年(2012年から2015年)に行われた化学物質過敏症患者への問診票による調査を比較すると、発症・症状発現原因が多様化していることが明らかになりました。

10年前は住宅の建設やリノベーションが主な発症・発現原因(68.9%)でしたが、近年ではこれらのシックハウス関連の原因が35.1%に減り、電磁場(26.1%)、香料(20.7%)や医療行為(7.2%)などの要因が増えていることが報告されています。

2.空気と化学物質過敏症

2.1 空気を介した化学物質の影響が大きい理由

化学物質過敏症の特徴は、多種多様な化学物質によって様々な影響が及ぼされることで、この反応は個人差があるため、反応する濃度はそれぞれ異なります。その影響が大きい理由の一つとして、空気中の化学物質が人体に及ぼす影響が指摘されています。

具体的には、空気中の化学物質が人体に取り込まれるプロセスは以下のような経路をたどります。

  1. 肺からの経路: 空気中の化学物質を肺に取り込み、肺の毛細血管から血流にのって脳の中枢神経系に化学物質が入り込み影響を及ぼします。
  2. 鼻からの経路: 鼻の粘膜から毛細血管血流にのって脳の中枢神経系に化学物質が入り込み影響を及ぼします。

このような経路によって化学物質が体内に取り込まれると、人体に対する影響が現れるため、室内空気中の化学物質を少なくすることは化学物質過敏症を予防する上で非常に重要な要素となります。

2.2 化学物質過敏症の主な症状

部位 症状
鼻症状 鼻水、鼻閉、臭い過敏、鼻粘膜性刺激・瘙痒、出血
眼症状 結膜充血、結膜刺激感・瘙痒、結膜乾燥、眼痛、流涙、目のかすみ、視力低下、開眼困難
耳症状 耳鳴り、耳が詰まる、耳痛・瘙痒、めまい、聴力低下、音に敏感
呼吸器症状 咳、痰、息切れ、咽頭違和感、くしゃみ、しわがれ声、過呼吸、呼吸困難
消化器症状 悪心、嘔吐、下痢、便秘、腹痛、腹部膨満、咽頭痛・違和感、咽頭浮腫、嚥下違和感、胸焼け、食堂痛、口腔内乾燥、味覚鈍麻
循環器症状 動悸、立ちくらみ、不整脈、血圧上昇、浮腫、顔面紅潮
泌尿器症状 頻尿、排尿困難、尿意鈍麻
皮膚症状 皮膚の疼痛、かゆみ、しびれ、干し、湿疹、蕁麻疹、発汗
筋・関節症状 筋力低下、筋肉痛、関節痛
精神・神経症状 頭痛、しびれ感、興奮、不眠、イライラ感、気分不良、集中力低下、記憶力低下、意欲低下、精神不安定、意識障害
婦人科症状 月経異常
全身症状 脱力、倦怠感、微熱、悪寒

2.3 シックハウス症候群と化学物質過敏症の違い

シックハウス症候群と化学物質過敏症の違い もっとも大きな違いは症状を引き起こす濃度と量です。シックハウス症候群は高い濃度で長時間過ごすことで症状がでますが、化学物質過敏症はシックハウス症候群よりも低い濃度で極わずかな時間で症状が出ます。なのでシックハウス症候群が生じるような空間では生活することは出来ませんし、風に吹かれて飛んできたタバコや柔軟剤などの極微量の成分に反応します。香付き柔軟剤の残留性はとても高いのでもし生活空間に混入してしまうと大変な被害を被ることになります。これらの違いからわかるように、化学物質過敏症とシックハウス症候群は、同じ化学物質に対する反応でも、それぞれ異なるメカニズムと感受性を持っています。

3. 対策

3.1 化学物質過敏症の空気測定

「CTM研究コンサルが推奨するパッシブサンプラー「エアみる」による空気測定は、室内の100種類以上の化学物質を検査することができます。シックハウス症候群の対策には最も効果的な測定方法です。ただし、化学物質過敏症の方が感じ取るような微量の空気中の化学物質の影響を評価することはできません。なので、あくまで高濃度の化学物質の発生源が室内にあるかの確認することを目的に空気測定を実施します。

シックハウス症候群の対策

シックハウス症候群の場合、「エアみる」によって住宅内に高濃度の汚染源が存在するかを調査します。発生源の特定後、発生源の除去や対策リフォームが行われることが一般的です。また、シックハウス症候群を引き起こすような高濃度の室内空気汚染は長期間にわたって続くことは少ないことから、一時的な避難も効果的な対策となります。

化学物質過敏症の対策

化学物質過敏症の場合は、室内の汚染物質をエアみるで検出することができる最も低い濃度以下まで除去する必要があります。「エアみる」を用いて室内に発生源がないことを確認した後、外部からの化学物質の流入を防ぐ対策や、生活用品などの持ち込みを減らすことなどが検討されます。エアみるでは目安として室内濃度指針値の1/10程度の濃度まで検出することが出来ます。

 

3.2 対策1 住宅内の避難場所の確保

まずは原因を取り除いて化学物質の曝露を減らすことが大事

室内および室外の化学物質の発生源の特定、および除去が一番重要な対策です。

化学物質過敏症を抱える人々は、ご自身が暮らす室内の化学物質の発生源をよく理解しています。というのもどんなセンサーよりも早くその物質に本人自身が反応するからです。ですので、室内の発生源を室内から撤去することは比較的可能です。しかし、室外の化学物質、例えば柔軟剤やタバコのようなものは家の隙間から空気と共に侵入してくるため除去することはできません。

農薬や難燃剤の除去も有効な対策

タンスや畳の裏に殺虫剤や防虫剤を使用していないか、また防火用のカーテンなどに難燃剤が含まれることがあるのでそういったものがないかを確認します。また防蟻処理としてネオニコチノイド系の農薬が床下に散布されていることもあります。

3.3 対策2 室内へ流入した化学物質の対処方法

化学物質が室内に侵入するのを防ぐのはとても難しいです。仮に室内に入ったとしても化学物質を速やかに分解・吸着することが出来れば被害を最小限にとどめることが出来ます。

これには、活性化フィルターとVOC(揮発性有機化合物)分解機能を内蔵した空気清浄機が有効です。空気清浄機は機種により性能が全く異なることがありますので、適切に選ぶ必要があります。おススメの空気清浄機の詳細を知りたい方はLINE公式アカウントよりお問合わせください。

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まとめ: 化学物質過敏症への理解と対策

 社会全体での考慮すべき課題

化学物質過敏症は微量の化学物質が原因で症状を発症します。化学物質物質にあふれた現代では誰もが化学物質過敏症に罹患する可能性があるということ、また微量の化学物質が風に乗って飛んだ先に化学物質過敏症の患者さんがいれば意図せずに加害者になる可能性があります。

まずはそういった病気が身近にあることを理解すること、

そしてもし自分が患者だったら、大切な人が外の空気を吸えずに自室にこもって苦しんでいたらという当事者意識をもって、生活スタイルを考える必要があります。

具体的な行動例として匂い付き製品(香付き柔軟剤、香水、芳香剤)、殺菌や農薬の使用、喫煙などは特に気を付ける必要があります。

健康に関する未来の展望

化学物質の使用が本当に健康に悪いのかという議論は昔から今でもずっとされていますが、健康の定義は昔も今も同じなのでしょうか?死ななければ、発がん性がなければ、生殖毒性が見つからなければ健康だと言い切れるでしょうか?動物実験で明らかに有害だと証明できない場合は問題ないのでしょうか?

現在そしてこれからの健康は、その人が本来持っている力を発揮できるような生き生きとした状態であるべきだと思います。多くの人が化学物質によって体調を崩しているのは揺るぎない事実です。多くの人の理解と配慮により少しでも化学物質過敏症の患者が減ることを期待します。

 

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  • この記事を書いた人

くうきメン

空気中の様々な化学物質を誰でも簡単に測定可能なサンプラーを開発した空気博士。企業→大学助教を経て独立。シックハウス相談を中心に、衣食住にまつわる生活環境の化学物質と環境問題の情報を発信しています。

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