思った以上に深刻なマイクロプラスチック汚染
近年のプラスチックゴミの海洋汚染問題を通じて、マイクロプラスチックやナノプラスチックが人の健康や環境に与える影響が注目されてきました。実は、私たちは食物連鎖や空気を通じて、これらのプラスチック粒子を摂取しています。現在のところ、人々は平均で週に約5グラムのマイクロプラスチックを摂取していると言われています。これはクレジットカード1枚分の重さと等しく、驚くべき多さです。その多くは食べ物や飲み物、そして空気から取り込まれることが分かっています。特に空気からの摂取量が最も多いとされています。
※マイクロプラスチックとナノプラスチックは大きさによって使い分けれていますが、今回はまとめてマイクロプラスチックと呼びます。
プラスチックの影響を考える3つの事
①マイクロプラスチックのベクター効果
プラスチックは疎水性です。疎水性というのは水に溶けにくい性質をもち、その一方で油の親和性が高い性質を持ちます。環境中の疎水性の有害物質は疎水性のものに集まりますので、マイクロプラスチック表面には疎水性の有害物質が集まりやすい場所になります。これはトロイの木馬のような効果をもたらし、本来ならば届きにくいところに有害物質な化学物質が届けられることになります。トロイの木馬とは安全な振りをして侵入し、悪さをすることです。体にとっては細胞の一種や食べ物だと思って体に取り込んだら実は体に悪い異物だったということになります。
②プラスチックの添加剤
一般的なプラスチックにはポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどがあります。これらのプラスチックには、性能を向上させるための様々な添加剤や補強材が混入されています。これらの添加剤の多くが有害物質です。フタル酸エステルや難燃剤や紫外線吸収剤、ビスフェノールなどです。これらの添加剤やプラスチックは時間とともに劣化し、水や摩擦、熱、光などの影響を受けて微小な粒子に分解していくのです。
③マイクロプラスチックの体内への取込み
プラスチックは分解しやすいとはいえ、人間の体に入ってすぐに分解することはありません。マイクロプラスチックは、ある一定の大きさを超えるとそのほとんどが体の外に排出されると考えられています。ところが0.1µm以下のナノプラスチックのサイズになると体の中の表面の粘膜を通り、体の内部に入り込む恐れがあります。これが異物として体に良くないのと、①のベクター効果によって本来ならば届きにくいところに有害物質な化学物質が届けられることになります。そのメカニズムは明らかになっていませんが、腸の微生物相の構成を変えることや食事中のマイクロプラスチックは腸の微生物相の多様性を減少させ代謝の変化を引き起こす可能性があるなどの報告があります。
これからどうするか
石油化学製品を使ってきたことにより、身の回りのいたるところにマイクロプラスチックが存在していることが明らかになってきました。その影響や人の健康に与えるメカニズムは明確になっていませんが、何かしらの影響があるのは間違いないようです。
人間の体にマイクロプラスチックが入る主な経路は、食べ物、飲み物、そして空気の3つです。
プラスチックを多く含む食べ物を避ける
ムール貝はマイクロプラスチックの摂取の指標として注目されています。研究によれば、中国産のムール貝にはヨーロッパ産よりも多くのマイクロプラスチックが含まれているとのこと。具体的には、225gのムール貝を摂取すると、7μgのプラスチックを摂取することになると言われています。ムール貝だけでなく、貝類はマイクロプラスチックの取込量が多いです。何が言いたいかというと、貝類を食べるとプラスチック摂取量が増えることになります。また貝の部位によってプラスチックの含有量が異なると思いますので、マイクロプラスチックが少ない部位を食べるようにするのも有効です。
水道水とペットボトルの水
ペットボトルの水の方が水道水よりもマイクロプラスチックが多いそうです。ペットボトルは保管期間が長い程、マイクロプラスチックの量が増えるようですので新しいものを飲む方が良さそうです。
プラスチックが少ない空気
さすがに、空気は選べませんが住宅内の空気は住宅内に存在するものに大きく影響を受けます。衣類や寝具、絨毯などはポリエステルやアクリルなどの石油化学製品ではなく綿やウールなどの天然の繊維を選ぶと良いですね。
マイクロプラスチック問題は今後も深刻化していく可能性がありますが、一人一人が意識を持ち、日常生活の中での小さな工夫や選択を通じて、環境や健康への影響を最小限に抑える努力を続けていくことが大切だと感じています。
本ブログは以下の論文を参考にしています。
タイトル:Microplastic Contamination of Seafood Intended for Human Consumption: A Systematic Review and Meta-Analysis
筆者:Evangelos Danopoulos, Lauren C. Jenner, Maureen Twiddy, and Jeanette M. Rotchell
https://ehp.niehs.nih.gov/doi/10.1289/EHP7171
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