本記事のトピックスです
・3密を防ぐによって浸透した換気への意識
・住宅内の空気・換気に関する意識と実態調査より
・CO2モニターを使った実例
この記事を書いた人
企業の研究員、大学助教を経て独立。空気中の様々な化学物質を誰でも簡単に測定可能なサンプラーを開発した空気博士。シックハウス相談を中心に、衣食住にまつわる生活環境の化学物質と環境問題の情報を発信しています。
本記事の対象者
・新築・リフォームを計画中の人
・建築中、リフォーム中の人
・シックハウスが気になる人
・家づくりに関わっている人
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・今回のテーマは”換気”です。
3密を防ぐによって浸透した換気への意識
新型コロナウイルスの感染を防ぐための「3密を防ぐ」というキーワードは、生活に根づいた言葉になりつつあります。この3密は「密集」、「密接」、「密閉」を表しており、コロナウイルスの3つの感染経路に由来しています。コロナウイルスの3つの感染経路は、接触感染、飛沫感染、空気感染(飛沫核感染ともいいます)で、もっとも感染のリスクが高いのが接触感染と飛沫感染です。人が「密集」、「密接」しているところで感染のリスクが高いことから、距離をとる、アクリル板を立てる、マスクをする、人が触ったものを消毒するといった光景はすっかりおなじみになりました。
換気で密閉を防ぐ
空気感染の対策は「換気」です。特に夏と冬は部屋を締めきるエアコンをつけることで密閉状態になりやすいことから、「換気」が重要であるといわれております。冬は室内空気が生暖かく頭がボーっとするので空気の汚れていること、密閉されていることに気が付きやすいですが、夏もエアコンをつけて部屋を閉め切った状態で換気が不十分ですと密閉状態になりますので注意が必要です。消毒やアクリル板による対策は目に見えてわかりますが、換気は十分であるのか不十分であるのかが分かりにくいです。
換気が十分であるかはどのように「見える化」するのでしょうか?
厚生労働省では推奨される換気方法を公表しており※1、一人あたりの換気量が毎時30 m3を満たしていれば、「換気が悪い空間」には当てはまらないとしています。これを室内空気中の二酸化炭素濃度で考えると1000 ppm以下ということになります。大人一人の二酸化炭素の排出量は約20L/時間ですので、室内の人数が増えても1000 ppmを超えない状況であれば必要な換気量は確保できていることになります。また、二酸化炭素濃度が低くければよいわけではなく、400 ppmに近づくにつれて外気の二酸化炭素濃度とほぼ同じ値となり、換気量が過剰な状態となります。このような状態では、冬場はとても寒く、夏は高温と温熱環境は劣悪で体調不良の原因となります。
そこでCO2 計を置いて二酸化炭素の濃度がいつでも確認し、「密閉」を見える化することが一般的になってきました。
参考※1 「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000618969.pdf
住宅内の空気・換気に関する意識と実態
しかしながら、モニターなどを使った空気の見える化が浸透するのはまだまだなのかもしれません。次に取り上げるのが旭化成建材による換気への対する意識の調査結果です。1752人に対して行ったアンケート結果とまとめが公開されています。(引用元リンク)。「換気」について、人々の意識や知識、換気行動の実態、新型コロナウイルス感染拡大前との変化などを調査したものです。詳細はリンク先の記事をご確認頂きたいのですが,注目すべきは以下です。
新型コロナウイルス感染拡大前と比較して室内の「空気のきれいさ」への関心が高まった人は54.9%いるものの、「自宅の換気ができていると思っていない」と回答した人の割合は50.8%
コロナによって空気の綺麗さに意識が集まったものの、空気を綺麗にする方法が明確にはわかっていない、つまり具体的な行動に移せていないということです。
CO2モニターを使った実例
そこで代表的な「みえる化ツール」にはCO2 モニターの使用例を紹介します。
部屋の換気や温度管理は自分の家であれば簡単ですが、オフィスなどの大勢の人がいる部屋で窓開け換気や空調切り替えなどはなかなかやりずらいことがあります。人によって感じる暑さや寒さはそれぞれですし、部屋の場所によっても温度が違うこともあります。また設定温度で調整するのか、実際の温度で室温を調整するかでも違いますので、たかが温度調整や換気でもトラブルになりやすいです。
部長が席を外した時にこっそり設定温度を変えたことがあります!!
また、空調は本来24時間稼働させるものですがエアコンの効きが悪くなるといった理由でスイッチを切ってしまう方がいます。すると知らず知らずのうちに室内が密閉状態になって今します。
そんな時にCO2モニターを室内に設置しておけば、客観的に室温やCO2濃度を調整できますので、おススメです。
CO2モニターで実測した結果を次に示しております。
オフィスの人数は10人程度。ソーシャルディスタンスは十分に確保されている状態
空調ONの状態が通常ですが、空調をOFFにしてしまう人がいます。
午前9時:10人程度出社。空調OFF。CO2濃度が急上昇。
午前11時:空調ON。CO2濃度の上昇が止まる
午後12時:空調OFF、再びCO2濃度が急上昇
午後2時:CO2濃度が1000ppmを超過
午後3時:空調のスイッチをON、CO2濃度低下
これはある部屋の一例ですが、室内のCO2濃度と空調の稼働の効果が良く表れています。空調をONにしておけば問題ありませんが、空調OFFで密閉状態になります。CO2モニターがあると換気設備である空調の大切さがわかります。人数が多くなり、空調だけでは換気が不十分である場合は窓開け換気を行うなど、状況に応じた対応も可能です。
これからは空気を見える化して生活していくことが当たり前になっていくかもしれません。
まとめ
まとめ
・コロナにより室内空気の重要性が認識されるようになった。
・それに対し適切な換気の行動はうまく取れていない。
・CO2の見える化で換気行動の動機付けが可能
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