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一般知識

アロマオイルから考える自然由来のVOCとの距離感 

本記事のトピックスです

・アロマオイルなどの天然由来のVOC

 

この記事を書いた人

企業の研究員、大学助教を経て独立。空気中の様々な化学物質を誰でも簡単に測定可能なサンプラーを開発した空気博士。シックハウス相談を中心に、衣食住にまつわる生活環境の化学物質と環境問題の情報を発信しています。

本記事の対象者

・アロマオイルが好きな人

・自然素材が好きな人

・身の回りの化学物質の興味ある人

・家づくりに関わっている人

 

シックハウスの原因の一つにVOCがありますが、VOCのすべてが悪者ではないのです。

アロマテラピーだってVOC

これまでVOCとシックハウスについて説明してきましたが、VOCのすべてが悪いわけではありません。植物から発生してくる香り成分などの気体の化学物質もVOCです。森に入った時の独特の香り、いわゆる森林浴の効果もVOCによるものです。杉やヒノキの木の香りなどもVOCです。草や花、枝などを水蒸気で加熱し、一度気体にして冷やして濃縮する方法によって集めたのが精油、アロマオイルです。

VOCであるアロマオイルの香りは大脳辺縁系を刺激して、気持ちを落ち着かせたり、気分を上げたりしてくれます。

アロマオイルは適切な量ですと良い香りとなるわけですが、濃くなり過ぎれば、不快になりますし、場合によっては体調不良の原因になります。アロマオイルを直接肌につけたり、飲んだりしないのはそう言った理由です。自然由来の成分なので安全なわけではなく,安全で有益な濃度と危険で有害な濃度があるのです。


いわゆる毒にも薬にもなります。

ほのかに香るジャーマンカモミールはリンゴのようなさわやかな良い香りがしますが、アロマオイルを直接嗅ぐと強烈な匂いですね。

天然素材だから大丈夫ということはない

自然素材の建材もおなじです。自然素材の家は白い漆喰の見た目も木の香りも心地よいです。しかし構造材も壁も床も天井もすべてヒノキの無垢材で仕上げると自然由来のVOC濃度が高くなりすぎることがあり、人によっては気分が悪くなることがあります。木には虫を寄せ付けない忌避効果があります。忌避効果には蚊やゴキブリが侵入しにくくなるなどの有益な効果がありますが、それらの成分が濃くなりすぎると人体にも有害になりえます。強い忌避効果をもつヒバやクスノキなどは神社や寺などに使用されることがあるようですが、住宅に使用されること、特に内装材として使用されることはほとんどありません。

 

化学工業品で体にいいものは少ない

シックハウスの原因となるような化学物質は,自然由来の化学物質と違って少量だからよい効果をもたらすというものは少ないです。この辺は不思議です。人工的な香料は天然の香をまねて作っていますが、よい香りを嗅いだことはありません(これはまったくの主観ですが・・・。)。香り付き柔軟剤や自動車用の芳香剤などは香害などの新たな公害を引き起こしています。

家づくりは建材選びから始まります

これから家を建てる人は、木造にするのか、軽鉄骨にするのか、プレハブにするのか、コンクリートで作るのかをまず決めます。そしてお願いする住宅メーカーはそれらの建材について十分に熟知しているところを選びましょう。

健康面を気にされている方は自然素材を選択される方が多いかと思います。木の種類や乾燥工程、薬品処理有無など細かなことまで知っているところを選びましょう。高温乾燥している構造材は割れやすく、室内空気が汚れやすい傾向にあります。理想は自然乾燥、人工乾燥であれば低から中温乾燥。内装材は集成材ではなくて無垢材を、無垢材を選ぶ場合の木の種類もこだわるとよいですね。余談ですが、天然乾燥した木と人工乾燥した木は同じ種類の木でも香りが違ったりします。高温での人工乾燥の際に燃料由来の排気ガスが木にしみ込んでいるという話を聞いたことがあります。また乾燥する温度によって乾燥後の木材中の精油成分が変化することあります。この場合は天然乾燥した木材から出てきている化学物質とは異なる成分が出ていることになります。科学の発展は著しいですが、まだまだ自然にはかないません。

まとめ:VOCでも自然由来ものは良い成分のものもあります。

・天然由来の化学物質は距離感(濃度)が大事です。

・自然素材だから自然のものだから安心と過信せずに、必要な分だけ適切な使用方法を心がけましょう。

・家を建てるときはまずどの建材を使うかから決めましょう。メーカーや工務店、建築士さんでそれぞれで得意な建材があります。

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  • この記事を書いた人

くうきメン

空気中の様々な化学物質を誰でも簡単に測定可能なサンプラーを開発した空気博士。企業→大学助教を経て独立。シックハウス相談を中心に、衣食住にまつわる生活環境の化学物質と環境問題の情報を発信しています。

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