結論:地中熱が普及するほど、「地下水を測る・管理する」需要が増える
都市部のビルや建物で、地下水の熱を冷暖房に利用する動きが進み始めています。これは「地中熱利用」と呼ばれる技術です。
地中の温度は外気に比べて年間を通じて安定しており、夏は涼しく、冬は暖かい。この性質を空調に使うことで、省エネルギー化につながる可能性があります。
なぜ今、地中熱が注目されるのか
特に注目されているのが、地下水をくみ上げて熱を利用し、その後、同じ帯水層に戻す「地下水還元型地中熱利用システム」です。
これまで都市部では、地盤沈下のおそれから、地下水のくみ上げに厳しい規制がありました。しかし近年、地下水を使い捨てるのではなく、熱だけを利用して再び地下に戻す技術が進んできました。この仕組みであれば、地下水資源を大きく減らさずに空調エネルギーとして活用できる可能性があります。
重要なのは「自由に使える」ではなく「管理しながら使う」
ここで誤解してはならない点があります。これは「地下水利用が自由になる」という話ではありません。
地下水をくみ上げる以上、地盤沈下のリスク確認は欠かせません。また、熱を利用した地下水を地下に戻すことで、地下水温や水質に影響が出ないかも確認する必要があります。
環境省の検討資料では、地下水還元型地中熱利用システムの導入にあたり、おおむね次のような考え方が示されています。
- くみ上げた地下水を、同じ帯水層に全量還元すること
- 揚水量や周辺の土質を踏まえ、地下水位や地盤高が著しく変化するおそれがないこと
- 稼働中にモニタリングを行い、異常時には速やかに停止・改善できること
つまり、これから重要になるのは設備そのものだけではありません。地下水位、地盤高、水質、間隙水圧、地下水温度、揚水量、還元量などを継続的に確認し、データとして管理する仕組みです。
見落とされがちな「水質管理」という実務課題
設備を長く安定して使うためには、水質管理も重要です。
地下水には、鉄、マンガン、カルシウム、マグネシウム、シリカなどが含まれることがあります。これらは条件によって、配管・熱交換器・井戸の中でスケール(析出物)や目詰まり、腐食の原因になり得ます。設備トラブルや効率低下につながれば、せっかくの省エネメリットも損なわれます。
そのため、地中熱利用では次のような水質項目の確認が実務上のポイントになります。
これらは「導入前に一度測れば終わり」ではなく、稼働中も継続的に把握すべき指標です。
地中熱の本質は「賢く使う」こと
地中熱は、再生可能エネルギーとして大きな可能性を持っています。一方で、地下水や地盤は目に見えにくい環境です。だからこそ、次の3つが不可欠になります。
- 導入前の調査
- 稼働中のモニタリング
- 異常時の対応計画
地中熱利用の本質は、地下水を無秩序に使うことではなく、地下水を守りながら熱エネルギーとして賢く活用することにあります。そのためには、設備技術と同じくらい、測定・分析・モニタリングの仕組みが重要になるのです。
CTM研究コンサルにできること
私たちCTM研究コンサル(環境分析の窓口)は、地下水・水質の各種分析やモニタリングのご相談に対応しています。
- 地中熱導入を検討する建物・施設の地下水水質調査
- スケール・腐食リスクにつながる鉄・マンガン・シリカ等の項目測定
- 用途に応じたカスタム分析のご提案
「地中熱を導入したいが、地下水の管理面が不安」
「どの項目を測ればよいか分からない」
といった段階からでも構いません。まずはお気軽にご相談ください。
件名に「地中熱・地下水の件」とご記入いただくとスムーズです。
- 環境省「建築物用地下水の採取の規制に関する技術的基準等に係る検討会資料」
- 環境省「地中熱利用にあたってのガイドライン(第4版)」
本記事では、地下水還元型地中熱利用システムの導入条件として示されている「同一帯水層への全量還元」「地下水位・地盤高への影響確認」「稼働中のモニタリング」等の考え方を参考にしています。